aki.Saitoのブログ

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ノーコード・ローコードとSAP

※この記事は、chillSAP 夏の自由研究2021 の記事として投稿しています。

note.com


はじめに

2021年2月にSAPがAppGyver社というノーコード開発プラットフォームのパイオニアである会社を買収したとアナウンスがありました。
ノーコード・ローコードには興味があったのでまとめたいと思います。

SAPのAppGyver社買収に関するアナウンスについてはこちら news.sap.com


目次


そもそもノーコード・ローコードとは?

ノーコード・ローコードは、プログラミングの経験が少ない人、または全くない人でもドラッグアンドドロップなどの簡単な操作でWebアプリケーションを作成する開発方法です。

ノーコード開発、ノーコード開発プラットフォーム、
ローコード開発、ローコード開発プラットフォームとも言います。

ノーコード、ローコード、プロコード(従来のコーディング)の特徴をまとめると以下のようになります。

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以下は簡単ですがそれぞれの説明です。

ノーコード開発

ノーコード(No Code)はその名の通り、コーディング0でアプリ開発ができます。
あらかじめ用意されたパーツや仕組みを組み合わせるだけで構築できますのでIT屋さんではなくとも簡単にアプリケーションを作ることができます。

ローコード開発

ローコード(Low Code)は基本的にはコーディング0でアプリ開発ができますが追加でコーディングすることもできます。
ノーコードに比べて拡張性があることが多いです。

プロコード開発

ノーコード・ローコードに対して、従来のコーディング手法をプロコードと呼びます。
コーディングに関する知識や技術力が必要となりますが、自由度が高く、性能面でも最適化することができます。


ローコード・ノーコードの現状

近年、ローコード・ノーコードがトレンドになってきており、すでに導入されている企業も多いのではと思います。
Gartnerによるとローコード開発技術の市場は年々拡大傾向にあり、2021年も堅調な成長が続くと見られています。 以下は2021年2月にGartnerが公開した調査を行ったローコード開発技術の収益を表したグラフです。
特にローコード開発プラットフォーム(ローコードアプリケーションプラットフォーム)は約23%、金額にすると年間10億ドル以上も拡大する見込みであることが分かります。 f:id:akisai14:20210823001604j:plain

Gartner Forecasts Worldwide Low-Code Development Technologies Market to Grow 23% in 2021

また、導入目的を見てみると「ビジネス環境の変化への対応」を一番の目的としている企業が多く、コロナ禍の中、より短期間でより簡単にアプリケーションを導入できるツールの需要が高まっているようです。 f:id:akisai14:20210823002946p:plain

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000160.000027677.html

ローコード市場におけるマジック・クアドラントを見てみると、数多くの有名企業とともにSAPのパートナーであるMedixもマーケットリーダのポジションにいます。 f:id:akisai14:20210823005138j:plain

SAPは2019年に出資したプロセス自動化ツールの「SAP Ruum」に続いての「AppGyver」買収となりますので今後マジック・クアドラントに入ってくるようなことはあるのでしょうか・・・?

※マジック・クアドラントについてはこちら


SAPのノーコード・ローコードツール

ここからはSAPの提供しているノーコード・ローコードツールについて紹介していこうと思います。
私が認識している範囲ですが、SAPは以下の3つのツール(ソリューション)を提供しています。

  • SAP Business Application Studio
  • SAP Ruum
  • AppGyver

SAP Business Application Studio

「SAP Business Application Studio」をノーコードツールと呼んで良いかは分かりませんが、1からコーディングしなくても良いほど開発をサポートする機能が備わっています。
「SAP Business Application Studio」はSAP Business Technology PlarformのCloud Foundry環境に用意されたCloudベースのIDE統合開発環境)です。

私自身あまり詳しくはないので紹介はここまでですが、SAPのブログなどでも紹介されていますので検索してみてください。

SAP Ruum

「SAP Ruum」は、SAP社が提供するノーコードで作成できるプロセス自動化ツールで、
元々はSAP社内のプロジェクトマネジメントとコラボレーションのために開発されました。
2020年のSAP TechEdで紹介され、ハンズオンも開催されました。
(そういえば私が初ハンズオン参加したセッションでした)

f:id:akisai14:20210823010630j:plain SAP Ruumがターゲットとしている主な領域は、特定の部門や拠点だけの処理や年1回のプロセスなどシステムのスコープ外となるようなプロセスです。

f:id:akisai14:20210823014606j:plain SAP Ruumの画面はプルダウンで選択するだけで入力フォームや結果表示の画面を作成することができます。
プロセスの実行状況を管理者が一元管理できるため、シャドーITを抑制できるとのことです。


AppGyver

SAPが買収したAppGyver社はフィンランドヘルシンキにある会社(従業員は18名)です。
AppGyverのソリューションはコーディングスキルを持たないユーザーでもWebアプリケーションやモバイルアプリケーションを構築できるノーコード開発プラットフォームです。
このソリューションは今後、SAP Business Technology Platformに含まれることになるそうです。
SAPはAppGyver社のソリューションをSAPのノーコード機能に加えることでワークフロー、フォーム、ロボティック・プロセス・オートメーション、軽量型ケース管理の開発の促進を目指しています。

AppGyverのサイト(https://www.appgyver.com/)を開くとこちらの画面が表示されます。
f:id:akisai14:20210824010234j:plain 開発できない側の人間にはかなりインパクトのあるページでした。


f:id:akisai14:20210824010602j:plain 全プラットフォームでというのはよく見かけますが、TVも含まれてるのは珍しいかなと。

AppGyverを触ってみた

無料トライアルがあったので触ってみました。
チュートリアルの数は少ないですが、動画付きで説明されているので分かりやすい印象でした。

こちらはアプリを作成する際の初期画面です。
真ん中にキャンバスがあり、編集画面=実際の画面になっているWYSIWYGエディター(見たままのものを実際に作成出力する)になっています。
左側に配置したいパーツのメニュー、右側にプロパティが表示されていて使いやすかったです。
Microsoft Power Appsに近い作りかなと思います。 f:id:akisai14:20210824011642p:plain


こちらはアプリの作成中画面です。
エディター自体は英語だけですがアプリ内は日本語もOKでした。
画面下部分にフロー図がありますが、ドラッグアンドドロップで処理のフローを作成することができます。 f:id:akisai14:20210824012415p:plain


面白いのが、PCで編集中のアプリをその場でスマホのアプリでも動かせることです。
「AppGyver Preview」というアプリで自分のID/PWを入力すると自分の作ったアプリが表示されPCで作成しながら実際にスマホで動作を確認することができました。
特にカメラやGPSと連動するアプリを作成する時には便利そうです。

こちらがスマホでの画面です。カメラとも簡単に連携できました。 f:id:akisai14:20210824025324j:plain

さいごに

今回はノーコード・ローコードの入門編をSAPと絡めてまとめました。
ノーコード・ローコードソリューションは多くのソフトウェアベンダーがリリースしており成長していく分野だと思いますので今後どう進化していくか楽しみです。

AppGyverについて、やっぱり自分が作ったものが動くのは楽しいですね。
今回、時間の都合でできませんでしたがSAP BTPやSAP HANAとの連携やGoogle Mapなど他のサービスとの連携もやってみたいです。